幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「お願いします」
やがて、列に並んでいた総司の番になる。
細身だけれど、剣術で鍛えた筋肉に無駄なく覆われた上半身に、松本さんが聴診器を当てる。
「楓のやつ、見とれてるぜ」
「見慣れてるはずなのにな」
列の後ろの方にいた永倉先生と原田先生が、松本先生の後にいたあたしを茶化す。
すると、隣で記録をとっていた山崎監察が、ぷっと吹き出した。
もう、みんなでからかって……!
「静かにしろ。胸の音が聞こえない」
松本さんはみんなを一喝すると、総司の胸に聴診器を当てなおした。
「……よし、異常なし」
「ありがとうございました」
総司は一礼して、その場から離れていく。
良かった、何もなくて。
そうして全員の検診を終えた結果……。
「近藤さん、土方さん。残念だが、新撰組は病の巣だ」
松本さんは、その様子の一部始終を見ていた局長たちにそう言った。
彼が言うには、現在170名くらいいる隊士の3分の1ほどが病にかかっているという。
そのほとんどが風邪に食あたり、あとは遊女にうつされる病気みたい。