幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「大勢が要る前で言うのは避けたが……彼の胸から、少し変わった音が聞こえたんだが」
どきりと胸が鳴り、顔がこわばっていくのが自分でわかる。
脳裏に閃くのは、総司が苦しそうに血を吐いていた、池田屋の夜……。
「まあ、沖田君はほら……人と少し違うから、もともと違う音がするのかもしれない。
気にしすぎならいいんだが、もしなにか相談があったら、いつでも連絡をよこしなさい」
松本さんはそう言って、屯所をあとにした。
まさか……ね。
総司はもう隠し事はしないって言ってくれた。
来年も再来年も、ずっと一緒にいるって言ってくれた。
何か異変があったら、相談してくれるはずだ。
「……大丈夫だ。ああ言われれば心配になるだろうけど、総司には君がいるんだから」
局長が優しく、背中をたたいた。
そうだ。総司には、あたしがいる。
もうあんな、苦しい思いはさせないんだから。