幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「うるせえなあ。病気だったら、こんなこともできねえって。
元気な証拠じゃねえか」
「黙れッ、この年中発情期狼!」
口付けをかわそうとジタバタじていると、廊下から声が聞こえてきた。
「沖田、銀月が来ているぞ」
それは斉藤先生の声だった。
総司はさっと顔色を変え、あたしの体を離した。
「何かあったのか」
銀月さんが通されていたのは、広間だった。
そこへ着くなり、総司は質問する。
すると人間の姿の銀月さんが、渋い顔でみんなを見回す。
「……皆さん、落ち着いて聞いてください」
座った総司とあたし、そして先にいた幹部たちが、一斉に緊張する。
銀月さんの顔があまりに険しくて、絶対に良い話じゃないだろうと思ったからだ。
そうして静かになった広間で、銀月さんは重い口を開いた。
「将軍・家茂様がお隠れになられました」
その言葉を聞いて、一斉に色めき立つ。
お隠れにってことは……亡くなったってこと?そんな!