幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「ひどい……」


御台様はどうなってしまうんだろう。


あたしが心配したって、どうにもならないけど……上様はあんなに、御台様を愛していたのに……これからもずっと、一緒に生きていきたいと言っていたのに。


上様や御台様の無念な心を思うと、涙が出そうになる。


「この情報は、我々が独自に入手したもの。

幕府から公表されるまでは、秘密にしておかれますように」


同じ部屋にいた原田先生も永倉先生も、魂の抜けたような顔をして、黙っていた。


一月前に始まった長州征伐はどうなってしまうんだろう。


大将を失って、幕府はこれからどうなるのか……。


「次の将軍は決まっていないんだな」


総司が言うと、銀月さんはうなずく。


「家茂様には、ご子息がおられませんし……御三家の誰も、今の幕府の将軍職に就こうとするものはいないようで」


たしかに今の幕府は長州征伐や、異国との関係で大変だけど……武士の身分さえ持たない新撰組だって、徳川の世を守るために命をかけているのに。


「また何か情報が入り次第、お伝えします」


銀月さんはそう言って、去っていった。


残されたあたしたちは誰もかれも放心状態で、しばらく誰も話せないでいた。



< 295 / 404 >

この作品をシェア

pagetop