幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「拙者たちはすでに山陵奉行戸田大和守様より、御陵衛士を拝命しております」
つまり、天子様の山陵(お墓)の一切を取り仕切る奉行から、孝明天皇のお墓を守る役目を得たということだ。
「そして、拙者たちは独自の道を進んでいきたいと思っています。
誤解しないでいただきたいのですが、拙者たちは決して、討幕派というわけではありません」
「でも、勤王派……天子様を中心として政治を行う世を目指すつもりなんだろう?」
「いいえ、拙者が目指すのは、国民全員が一致団結し、国全体を強くすること。
幕府と討幕派で、争っている場合ではないと思っています。
拙者は新撰組を脱するのではなく、友好的な分離をしたいのです。
表面では薩長と親交を結ぶこともあるでしょうが、その機密は密偵を通して隊に報告しましょう」
それは、佐幕の新撰組と思想は違うけれど、完全に敵となるというわけではないということか……。
「……いつか、私たちの道が交わる日は来るのでしょうか」
近藤先生が寂しそうにこぼすと、伊東先生は迷いのない顔でにこりと微笑む。
「ええ、いつか、きっと。
この国の行く末を思う者どうしですから」
そうかなあ。
幕府と討幕派の溝は、もう修復できないくらい深くなっているような気がする。
争わないで一致団結なんて、本当にできるんだろうか……。