幕末オオカミ 第二部 京都血風編

・またね

伊東派が分離するという噂は瞬く間に広まり、隊士たちの間にざわめきを生んだ。


けれど、もうすでに伊東参謀から声をかけられている隊士以外は、離隊は禁止。


参謀を慕っていたのに御陵衛士に入れてもらえなかった隊士もいて、その人たちはがっくりと肩を落としていた。


「斉藤先生、どういうことですか！」


あたしは井戸の近くで、顔を洗っていた斉藤先生をつかまえた。


「楓か。朝から騒々しいな」


「って、なんでそんなに冷静なんですか？」


斉藤先生はしれっとした顔で応える。


「お前に捕まるとうるさそうだから避けていたのに、とうとう捕まったな」


斉藤先生はそう言いながら、人気のない屯所の裏へと歩き出す。


あたしに捕まるとうるさそうって……何を聞かれるか、もうわかってるんじゃん。


金魚の尾のような髪が揺れるのを見ながら、あたしは声を落として質問しなおす。