幕末オオカミ 第二部 京都血風編
『に、逃げたりしません!』
俺の中に、初めて他人への対抗心が生まれた瞬間だった。
土方さんは笑ったまま、近藤先生と向かい合う。
その瞬間、道場の空気が張りつめる。
審判の合図で、二人は竹刀を構えたまま、じりじりと移動しながら、お互いの隙をつこうとにらみ合う。
『やぁっ!』
先に動いたのは土方さんで、近藤先生はその竹刀を正面から受けた。
土方さんは一度離れ、また打ち込む。
近藤先生はそれを払い、土方さんの籠手を狙って打ち込む。
『すごい……』
二人から放たれる熱気に包まれ、俺もいつの間にか手のひらにしっとりと汗を書いていた。
二人の打ち合いは、恐怖を忘れて熱中してしまうほど、俺を引きつけた。
やがて、土方さんが近藤先生の隙をつき、その面を狙って、すばやく一歩を踏み出した。
『勝太さん……!』
近藤先生が負けてしまう。
悲鳴に近い声を上げてしまった俺の心配をよそに、近藤先生は力強く土方さんの竹刀を払う。
そして、土方さんが体制を立て直す隙もないくらい早く、その面に強烈な一本を与えた。