幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「どうして、御陵衛士に……?」
「伊東さんの考えに、共感したからだ。
今は、同じ日本人どうしで争っている場合じゃない」
斉藤先生は淡々と答える。
その顔には少しの動揺も、迷いもなかった。
「そんな……」
今までずっと、幕府のために戦ってきたのに?
池田屋でも禁門の変でも、その腕を惜しみなく発揮してきた斉藤先生が、どうして……。
「寂しいです。斉藤先生も、平助くんも、何も言ってくれなくて」
参謀の口から聞かされるより前に、相談してほしかった。
平助くんもあたしをうるさいやつと思っているのか、避けられているようであまり見かけない。
「……武士が自分の道を自分で決められなくてどうする。
俺たちはただ、決断したまでのこと」
そりゃあ、斉藤先生の行く道を、あたしが決められるわけはない。そんなことはわかってる。
けど、こんなに突然、分かれ道が目の前にやってきてしまうなんて。