幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「どうして、御陵衛士に……?」


「伊東さんの考えに、共感したからだ。
今は、同じ日本人どうしで争っている場合じゃない」


斉藤先生は淡々と答える。


その顔には少しの動揺も、迷いもなかった。


「そんな……」


今までずっと、幕府のために戦ってきたのに?


池田屋でも禁門の変でも、その腕を惜しみなく発揮してきた斉藤先生が、どうして……。


「寂しいです。斉藤先生も、平助くんも、何も言ってくれなくて」


参謀の口から聞かされるより前に、相談してほしかった。


平助くんもあたしをうるさいやつと思っているのか、避けられているようであまり見かけない。


「……武士が自分の道を自分で決められなくてどうする。
俺たちはただ、決断したまでのこと」


そりゃあ、斉藤先生の行く道を、あたしが決められるわけはない。そんなことはわかってる。


けど、こんなに突然、分かれ道が目の前にやってきてしまうなんて。


< 310 / 404 >

この作品をシェア

pagetop