幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そんな顔をするな。
晴れて沖田と夫婦になれる身分になったんだろう?
所帯や子供ができれば、俺や藤堂のことなんて忘れて、思い出さなくなる。
そうして、女子として幸せになれ」
斉藤先生は少しだけ微笑んで、あたしの頭を優しくなでる。
「忘れたりなんかしません……!
斉藤先生も平助くんも、あたしにとっては大事な人です!」
槐のことを、うらやましいと欠片も思わなかったわけじゃない。
今だって心のどこかで、普通の女子として幸せになる道に憧れている自分がいる。
でも、それよりも、総司の一番近くで、共に戦っていくって決めたから。
「……ありがとう」
斉藤先生はそうつぶやくと、これ以上の話は無用と言うように、あたしの横をすり抜け、屯所の方へ歩いていってしまう。
そうか……。
他人には簡単に理解できなくても、本人がそう決めてしまったなら、他人にそれを覆すことはできないんだ。
立ち尽くして斉藤先生を見送ると、突然後ろから声をかけられた。