幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「お前は、涼しそうでいいよな」


と言いながら、総司はあたしの忍び装束の胸元をしっかりと合わせてくれた。


「よし、行くか……」


準備が済んで、部屋を出ようとしたとき……。

前の廊下を、ドタドタと大きな足音が駆け抜けていった。


「近藤先生?今日は会津藩邸じゃなかったか?」


って、総司、あんた足音だけで正体がわかるって、どれだけ局長が好きなの!

ツッコむ暇もなく、総司は障子を開ける。


すると、副長室から、局長の大きな声が聞こえてきた。


「トシィィィィ!俺は、俺はっ……」

「わかった、わかったら、落ち着け。な?」


そちらへ向かうと、障子は開けっ放しのままだった。


部屋の中では、局長が副長に抱きついて、肩を震わせている。


「何かあったんですか」


総司が声をかけると、副長がこちらを向いて、苦笑した。


「近藤さん、あんたから教えてやれよ」

「おお、総司……うっ、ううっ」


顔を上げた局長は、目からボロボロと涙を流していたけれど、口元は笑っていて、えくぼができていた。


< 317 / 404 >

この作品をシェア

pagetop