幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「お前は、涼しそうでいいよな」
と言いながら、総司はあたしの忍び装束の胸元をしっかりと合わせてくれた。
「よし、行くか……」
準備が済んで、部屋を出ようとしたとき……。
前の廊下を、ドタドタと大きな足音が駆け抜けていった。
「近藤先生?今日は会津藩邸じゃなかったか?」
って、総司、あんた足音だけで正体がわかるって、どれだけ局長が好きなの!
ツッコむ暇もなく、総司は障子を開ける。
すると、副長室から、局長の大きな声が聞こえてきた。
「トシィィィィ!俺は、俺はっ……」
「わかった、わかったら、落ち着け。な?」
そちらへ向かうと、障子は開けっ放しのままだった。
部屋の中では、局長が副長に抱きついて、肩を震わせている。
「何かあったんですか」
総司が声をかけると、副長がこちらを向いて、苦笑した。
「近藤さん、あんたから教えてやれよ」
「おお、総司……うっ、ううっ」
顔を上げた局長は、目からボロボロと涙を流していたけれど、口元は笑っていて、えくぼができていた。