幕末オオカミ 第二部 京都血風編
うっかりもらい泣きしそうになって目をこすると、隣から鼻をすする音が聞こえた。
ハッとそちらを見ると、総司が大きな手で自分の顔を覆っていた。
「……はは、カッコ悪ぃな」
総司は涙声でそう言うと、ぐいっと目元をぬぐって笑った。
きゅうんと、胸の奥が音を立てる。
感動してる総司、可愛い……!
「カッコ悪くないよ!よかったね、ほんとに良かったね!」
「ばぁか、まとわりつくなって!」
子犬のように総司にじゃれるあたしを見て、いつもは舌打ちをする副長が声を立てて笑った。
すると局長も、つられるように微笑む。
ああ、みんなが笑ってる。
こんなの、すごく久しぶり。
たったそれだけで、すごく幸せな気分!
こうして、『御陵衛士による新撰組の分離』という衝撃的な出来事から一変、思いがけない朗報に、隊士たちは喜んだのだった。