幕末オオカミ 第二部 京都血風編

・大政奉還



新撰組が幕臣となってすぐ、屯所を西本願寺から不動堂村へと移転することになった。


新しい屯所は広くて立派で、大名屋敷のようだった。


そして数か月……。


いつの間にか、木の葉が赤く染まり始めていた。


京の街には禁門の変以降に戻ってきた、各藩の不逞浪士が潜伏している。


あたしたち監察は、その動きを探るのが主な仕事となっていた。


総司は池田屋で死にかけてから、夜の巡察ではなるべく一人にならないようにしているみたい。


そうして無暗に狼化することもなくなり、あたしは総司の目付というより、小姓のような役割になっている。


ある日、薩長、さらには土佐の動きまで追いかけまわって多忙な山崎監察から傷薬を買ってくるように頼まれたあたしは、男装して街に出た。


ちなみに一番隊は今、昼の巡察中。


「っていうか、あたしにも監察の任務を回してくれたらいいのに……」


山南先生や伊東さんの件で、あまり役に立たなかったせいか……相変わらず、あたしには重要な任務は回ってこな
かった。


池田屋の頃は、ものすごい功労者扱いだったのにな……仕事も人生と同じ。常にうまくいくなんて甘いものじゃないみたい。


「腐ってる場合じゃない。がんばらなきゃ!」


山崎監察の用事が済んだら、薩摩藩邸の近くにでも行ってみよう。


そんなことを思いながら、街を歩いていると……。

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