幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「こちらです」
総司たちはいつもの巡察の道筋を、何事もなく進んでいるようだ。
彼の気配を感じる四条の方へと歩き出すと、上様は黙ってついてきた。
それにしても、すっごい偉そうな庶民……。
周りから見たら、あたしは小姓みたいに見えるのかも。
庶民に小姓なんているはずないけど。
「そういえば、よくあたしだとお気づきになられましたね」
「明らかに女の体をした者が、なぜ男装などしているのかと思ってよくよく見たらお前だったのだ」
「な、なんですとっ?」
さらしと鎖帷子で胸を潰しているのに、なぜ体つきから女だと……。
「手足と腰が細すぎる。
そして、歩くとき、男は踵に重心がかかるが、女はつま先にそれが移動する。
お前は完全につま先に重心をかけて歩いていたぞ。
もっと気をつけるのだな」
ええ~!そんなの、新撰組の誰にも言われたことなかったのに!
上様、ただの意地悪で気難しいおっさんだと思っていたら、意外なところを見抜く力があるんだ。
って、感心していないで早く総司と合流しなきゃ。
こんな街中にいて、万が一、上様に何かあったら大変だ。