幕末オオカミ 第二部 京都血風編
そうして何日かお城に通っているあたしたちは、今日も上様のいる黒書院へと案内された。
このとき、10月13日(現暦11月)。
夜の風が肌寒くなってきていた。
「失礼します」
「おお、入れ」
部屋の中には、前に来たときにはなかった大きな文机と、膨大な紙の束が積み上げられている。
日が沈んで暗くなった部屋の中、ろうそくの灯りが揺れていた。
まるで土方副長の部屋みたいだと思っていたら、総司が刀をかけてから、上様に話しかけた。
「今日は城の中が騒々しいようですね。何かあったんですか」
え?そう?
お城の中っていつもたくさんの人がいて、騒がしい印象だったから……今日が特別騒がしいとは思わなかったんだけど。
「ああ、重要な会議があった後でな」
上様は筆を置き、座ったあたしたちの方を向いた。
「明日、大政奉還を奏上することに決めた」
……突然、端的にそう言われても。
「ど、どういうことでしょう?」
聞き返すと、上様は淡々と説明しだす。