幕末オオカミ 第二部 京都血風編


そうして何日かお城に通っているあたしたちは、今日も上様のいる黒書院へと案内された。


このとき、10月13日(現暦11月)。


夜の風が肌寒くなってきていた。


「失礼します」

「おお、入れ」


部屋の中には、前に来たときにはなかった大きな文机と、膨大な紙の束が積み上げられている。


日が沈んで暗くなった部屋の中、ろうそくの灯りが揺れていた。


まるで土方副長の部屋みたいだと思っていたら、総司が刀をかけてから、上様に話しかけた。


「今日は城の中が騒々しいようですね。何かあったんですか」


え?そう?

お城の中っていつもたくさんの人がいて、騒がしい印象だったから……今日が特別騒がしいとは思わなかったんだけど。


「ああ、重要な会議があった後でな」


上様は筆を置き、座ったあたしたちの方を向いた。


「明日、大政奉還を奏上することに決めた」


……突然、端的にそう言われても。


「ど、どういうことでしょう?」


聞き返すと、上様は淡々と説明しだす。


< 336 / 404 >

この作品をシェア

pagetop