幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「徳川が持っている政権を、朝廷に返すということだ」
政権を、朝廷に返す……。
ってことは、この国を支配するのが徳川幕府じゃなくて、朝廷になるってこと?
「そんな!」
「楓、落ち着け。上様、どのようなお考えでそのようなことに?」
あたしに落ち着けって言っているくせに、総司だって慌てて変な言葉になってる。
そんなあたしたちに、上様は冷静に告げる。
「誤解するな。
政権は朝廷に返すと言っても、実質的にこの国を統治するのは、今まで通り徳川の役目だ。今までとそう変わらん」
「つまり……討幕派を静めるための策略ですか?
幕府の独裁政権を辞めれば、討幕派が幕府を攻撃する理由がなくなる」
「そういうことだ。これからは諸侯と分権しながら政を行うことになる。
さすれば討幕派もすぐに、徳川に頼ってくるようになるだろう」
上様はそう言うと、そばにいた小姓に全員分のお茶とお菓子を持ってくるように告げた。
「上様は討幕派と戦をする気はないのですか」
総司が厳しい顔で聞く。