幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「今討幕派と全面的に戦って勝ったとしても、幕府の戦力は一時的に弱まるだろう。
そこを異国に攻めこまれたらひとたまりもない」
「たしかに……」
でもそれって、誰が政をするかが違うだけで、伊東さんの意見と似てない?
話し合いで解決できたら、武士はいらないんじゃ……。
無闇に戦をして、人が死ねばいいとは思わないけど。しなくて済むのなら、それが一番なんだろうけど。
果たして、徳川の勢いはいつまで続くんだろう……。
不安に思うのはあたしだけじゃないらしく、総司は固い表情で、膝の上の拳をにぎりしめていた。
そしてこの翌日の10月14日、上様は大政奉還を奏上。翌日には朝廷がそれを許可。
表面上、幕府の権力はなくなり、幕臣となって数か月しか経っていなかった新撰組に、また波紋が広がった。
「総司よ……今度の上様はどうなってんだよ!
なんで討幕派を戦でとっちめてやろうと思わねえんだ!」
幹部が集まって夕餉をとっている最中、永倉先生が、酔った勢いで総司に詰め寄る。
「俺に言われても。結局上様は征夷大将軍のままですし、京都守護職も存続。俺たちは今まで通り、勤めを果たすしかないでしょう」
総司は困った顔で永倉先生をなだめ、そのすきにあたしが近くにあったお酒をそっと片付けた。