幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「って言われてもなあ……。討幕派の方だって、これで黙っておさまると思うか?
朝廷と手を組んだりしたら、どうすんだかな」
原田先生が心配そうに言う。
「まさか!長州なんか、帝を誘拐しようと企んだり、禁裏に発砲したこともあるんですよ」
「前の帝は、会津びいきの長州嫌いだったから信用できたさ。でも今の幼い天子様は、どうかねえ」
あたしの言葉は通じず、原田先生はみんなが不安に思っていることをアッサリ口にする。
「原田先生……やめてくださいよう~」
口に出せば出すほど、不安が現実になっていく気がして、無意識に鳥肌が立つ。
「おめえら、罰あたりなことばっか言ってんじゃねえ!うるせえんだよ!」
いつも冷静な土方副長が、お膳を拳でぶったたく。
茶碗がひっくり返り、お膳の足が折れた音で、その場は静まり返った。
ああ……副長まで荒れてしまうなんて。そりゃあ他の隊士も動揺するよ……。
そんな新撰組だったけど、一応翌日からも普段通りの任務を続けることになった。
総司とあたしも、隊士と監察を続けながら、二条城にも通い続けた。
それから約一月後……。
京の街に寒い冬がやってきたとき。
河原町通りの近江屋で、坂本龍馬という人物が暗殺されたという一報が、新撰組にもたらされた。