幕末オオカミ 第二部 京都血風編
土方さんはそれからも、行商の合間に来ては、修行のついでに俺をからかって遊んだ。
そんなある晩、近藤先生と土方さんに挟まれて眠っていた俺は、突然目が覚めてしまった。
『宗次郎……?厠か?ついていってやろうか?』
もぞもぞする俺に、近藤先生が気づく。
『だ、大丈夫です、ひとりで行けます』
いつも、夜は水分を控えるようにしていたのだけど、久しぶりに歳三さんが来て、はしゃいでお酒の代わりにお茶を飲みすぎてしまった。
そんな俺は慌てて、外の厠へ走る。
その帰り、ふと空を見上げると、明るい月が出ていた。
『あう……』
体の中で、なにかがうずく。
しまったと思う間もなく、自分の体が変わっていくのがわかった。
頭と尻がむずむずする。
手を見れば、狼のような灰色の毛に覆われていて、爪が伸びていた。
狼化してしまった俺は、ほとんど無意識で、月に向かって遠吠えをする。
『あおおおおおおーん……』
そうだ、自分は今まで何をしていたのだろう。
どうして二本足で立って、人の格好なんかしていたんだろう。