幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「左之、ちょっといいか」
「ん?なんだよ土方さん」
原田先生は槍を持ったまま、階段の方へと近づいてくる。
「その坂本の暗殺だがな、お前が疑われているらしい。
近藤さんが、幕府のお偉いさんから呼び出されて、事情を聞かれたとよ」
「は?俺?」
原田先生は寝耳に水といったふうに、驚いた顔でぱちぱちとまばたきをした。
「現場の遺留品の中に、蝋色の鞘があったんだと。
それを新撰組の原田のものだと証言したやつがいる」
「は……ふざけんなよ!俺が独断でそんなことするはずねえだろ!」
しかも、原田先生の刀の鞘は、今もちゃんとその腰にぶら下がっている。
「それはわかってる。問題なのは、誰がその証言をしたのかということだ」
「誰だってんだよ」
永倉先生がずいっと前に出ると、副長は階段を下りてきて二人に顔を近づけると、声をひそめた。
「伊東という噂だ」
「え……!」
思わず声を上げると、みんなが「しっ」とあたしをにらんだ。
うう、ごめんなさい。