幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「土方さん、少し痩せちまったような気がするな……」
「頭を全力回転させ続けて、疲れてるんだろうよ」
永倉先生たちが、心配そうにその背中を見送る。
もともと鬼みたいだった副長の顔が余計けわしくなったのは、山南先生が亡くなってからだ。
とにかく自分が隊を切り盛りしなきゃと思っているんだろう。
この頃は伊東派の分離や大政奉還もあって、考えること山積みだしね。
無理して倒れたりしなきゃいいけど……。
「でも、痩せてますます男っぷりが上がったよな」
「相変わらずモテてるって、島原の遊女が言ってたぜ。うらやましい限りだ!」
二人の明るいやりとりに、思わずぷっと吹き出してしまった。
けれど、前はこの中に平助くんもいたのにと思うと、なんだか切ない気持ちになる。
「そんな顔するなよ。気合入れて行って来い!」
どんと背中を叩かれて、むせそうになった。
そうだよね。色々あるけど、目の前のことをがんばらなくちゃ。
あたしは笑って二人に手をふり、任務の準備へと急いだ。