幕末オオカミ 第二部 京都血風編
報告が済むと、幹部たちは全員ため息をついた。
その中でも副長は鬼のような顔をして、奥歯を噛みしめている。
「やはり伊東は黒か。しかも、自分で坂本を殺っておいて、その罪を俺たちに着せようとしてやがる」
副長の言葉の後に、むううとうなったのは局長だ。
「たしかなんだろうか」
「斉藤もそう思うと言うなら、たしかだろう」
斉藤先生は御陵衛士にいて、伊東さんの動向をあたしよりよく知っているはず。
「そういえば、斉藤はいつ戻ってくるんだ?」
永倉先生が副長に聞く。
え?なにそれ、「戻ってくる」って……。
「早速呼び出そう。山崎、頼む」
「御意」
「え、ちょ、ちょっと……もしかして、斉藤先生は……」
あたしが割り込むと、総司がその言葉を継ぐ。
「もしかして、間者として御陵衛士に潜入させていたんですか?」
「ああ。山崎の報告を聞いてすぐ、斉藤に頼んでおいた。
あいつは伊東に気にいられているようだったからな」
なー!だまされたー!
敵をだますにはまず味方からとはよく言ったもんだ。
そのことを知っていたのは、局長と副長と山崎監察、そして永倉先生だけだったらしい。
原田先生も「そうだったのか?」と目を丸くしていた。