幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……必要ならば斬る。それだけだ」
副長は冷徹に言い放つ。
「それは、必要なければ斬らなくていいってことだな?」
永倉先生が念を押すように尋ねると、副長は黙って首を縦に振った。
「とにかく明日、ちょうど俺と近藤さんは伊東に会う予定がある。
その時に酒を飲ませて酩酊させたところを、斬る」
芹沢のときと一緒だ……。
新選組の敵とはいえ、暗殺計画を聞くのは、いつも心が暗くなる。
「その遺体を餌にして御陵衛士をおびき寄せ、一網打尽にする」
武士らしくないけど、そうでもして一気に片付けないと、後で新撰組が報復を受けることになる。
幹部のみんなは、苦々しい顔でうなずいた。
「討手は、永倉、原田以下隊士数名」
「あいよ」
永倉先生がうなずく。
「総司、楓、お前たちは闇に潜み、平助が逃げる手引きをしてやれ」
「土方さん……」
総司がホッとした顔をして、あたしに笑いかける。
「新八、左之、平助を斬らせないように配慮しろ」
「わかってる!」
「当たり前だ!」
二人も副長の言葉を聞き、明るい表情で胸をはった。