幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「それだけではありません。
伊東は、局長と副長を暗殺し、残った隊士たちを御陵衛士に引き込む気でいます。
新撰組の兵力を、そのまま奪おうとしているようです」
「弁論で隊士たちを説得する自信があるってことか。全く、めでたいやつだ」
「いえ、そうではありません」
反論した斉藤先生を、副長が黙って見つめる。
斉藤先生はいつもの涼しげな眼差しで、そちらを見返した。
「詳しいことはわかりませんでしたが、伊東はもののけの力を使い、新撰組隊士たちを操ろうとしているようです」
「ええっ!」
また、ものののけ~?
新撰組って、もののけ絡みの事件から逃れられない運命なのか?
「はあ……そういうことか」
同じことを思ったのか、副長は盛大なため息をつく。
「楓、総司を頼んだぞ。
もののけがらみになると、あいつはすぐ狼化する傾向があるからな」
「はい」
あたしと総司は、伊東さんの暗殺の時点から、平助くんが現れるまで一部始終を見張ることになっている。
直接伊東さんに攻撃をしかけるのは永倉先生の配下の隊士らしいけど、伊東さんがもののけの力に関わっているってことは、他の御陵衛士も普通の人間じゃないかも……。
果たしてこの一件、無事に終わるんだろうか。