幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「せっかくだから聞いておくが、山南さんを陥れたのも、お前か?」
もう敬語を使う必要もないと思ったのか、乱暴な口調で総司が聞くと、伊東はふっと笑った。
「のも、とはどういう意味ですか」
「坂本暗殺はお前の仕業だろう?」
「さあ、どうでしょう」
どうやら、何も話すつもりはないらしい。
総司は舌打ちすると、刀をかまえて駆けだした。
「否定もしないってことだな!」
強く地を蹴り、総司は伊東の頭上に舞い上がる。
その体を真っ二つにするべく、雷のように下ろされた刀。しかし……。
「総司っ、横!」
総司の動きより早く、伊東の長く巨大化した尾が、総司の脇腹を狙っていた。
「ぐあっ!」
「総司!」
手負いの敵と思って油断したのか、総司は脇腹を打たれ、地に払い落とされる。
その背中が衝突したのは、あたしのすぐそばの板囲いだった。
「大丈夫?」
「ちっ……あのヘビ野郎」
総司は刀を持ったまま、すぐに立ち上がる。