幕末オオカミ 第二部 京都血風編
本気で怖がる楓の反応に、笑いがこみ上げる。
ああ、なんだって戦の前だっていうのに……こいつといると、心が休まるんだろう。
ふと自分の腕に楓の髪の感触を感じ、笑うのをやめる。
楓は自分の頭を、俺にもたれかけさせて、言った。
「……あたしも、いつかその家族のなかに入れるかな……」
そういえば、こいつは両親を失っていたんだっけ。
俺よりももっと、孤独だったはずだ。
きゅっと胸がしめつけられるようで、俺はそれをごまかすように、片手で楓の髪をなでる。
「……もう、家族みたいなもんだろ。
お前がこの前の話を受けてくれるんなら……正式に、俺たちは家族になれる」
出陣前のことを思い出したのか、寄り添う楓の体温が少し上昇したような気がする。
……とは言ってみたものの、断られたらどうしよう。急に不安になった。
「や、あのさ、この戦が終ってからゆっくり考えてもらえればかまわねえから!」
「総司……」
「生き残らなきゃ話にならないもんな、ははは……」
苦し紛れに笑う俺の腕に自分の腕をからませ、楓はぎゅっと力を込めた。