幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「おっ、おい、総司?総司!」
永倉先生と原田先生が、総司の体を揺さぶりながら叫ぶ。
「総司!」
何が起こってるの?
一晩に二度も狼化したから、体に負担がかかったんだろうか。
心配でしょうがないけど、今平助くんから手を離すわけにはいかない。
「おい、とにかく二人とも屯所に運ぶぞ!斉藤、医者を呼んで来い!」
原田先生が叫ぶと、斉藤先生がうなずいた。
そのとき、にぎっていた平助くんの手がぴくりと動いた。
「楓、早く総司の方へ……」
「平助くん?」
「総司は、楓の血を、飲めば、治るんだろ」
切れ切れの息で、総司とあたしを思いやってくれる平助くんの声が優しすぎて、涙が出そうになる。
あたしの中で一番大事なのは、間違いなく総司。
けれど、こんなに愛しい仲間の手を今離すことが、どうしてできるだろう。
「あたしには……なにもできないのっ?」
何が万能薬だ。
こんな血、ひとつも役に立ちやしない。
山南先生の気鬱を晴らすこともできなかった。
上様も暗殺されて死んでしまった。
そして、今苦しんでいる平助くんの怪我を治すこともできない。