幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「誰かっ、誰か助けて!誰でもいいっ、平助くんを助けて──!!」
無力な自分が悔しくて溢れる涙。
やりきれない思いを夜空に吐き出すと、ふと目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
そこから現れたのは……。
『お呼びになりましたか、楓様』
「ぎん……げつ、さん?」
どうしていきなり銀月さんが?
突然現れた巨大な狼は、ぐるりと周囲を見回してから、語りかけてくる。
『私は、総司様と楓様を守るために存在しています。
楓様の助けを呼ぶ声が、私をここに招いたのです』
そう言って銀月さんは、総司の近くに寄った。
ふんふんと鼻を鳴らし、総司に顔を近づける。
『大丈夫です。総司様は、気を失っているだけ。
今急がなければならないのは、そちらの方のようです』
銀月さんはあたしの横に伏せ、平助くんの傷の様子を見る。
『これはいけない』
血を失いすぎ、あたしと斉藤先生の霊力でなんとか息をしている状態の平助くんを見て、銀月さんの声に緊張が走る。