幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「藤堂……」
斉藤先生は泣きはしなかったけど、明らかに衝撃を受けた様子で、立ち尽くしていた。
「平助くん……」
絶対に助けると誓ったのに。
どうしてあたしは、こんなに無力なんだろう。
力の入らない膝でなんとか立ち上がり、気を失っている総司の元に寄る。
すると、永倉先生がぽんとあたしの肩を叩いた。
「あ、あいつは、そのうち、すぐ帰ってくるさ。
ははは、楽しみにしててやろうぜ。どんなマヌケなもののけになって帰ってくるか」
彼はぼろぼろと涙を流しながら、無理やりに笑って言う。
「ありがとな、楓。
お前があいつを呼んでくれなきゃ、平助はここで終わりだったかもしれない」
原田先生まで優しい声をかけてくれるから、途端に涙が溢れだす。
「でも、本当に同化できるかはわからないって……」
「馬鹿!できるに決まってんだろ!」
永倉先生が怒鳴る。
「俺たちは平助を信じてようぜ。信じることしかできないけれど……」
原田先生は、その長い腕で永倉先生とあたしの肩を、同時に抱いてくれた。
「はい」
信じること以外、何もできないけれど。
平助くん……絶対に帰ってきてね。
みんなで、いつまでも待っているから。
絶望なんて。
あたしたちが希望を失わなければ、そんなもの。
どこにも、ないんだから。