幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「ごほっ、ごほ……」
倒れて以来、総司の咳はどんどんひどくなっていく。
夜、同じ布団で寝ていると、心配で、不安で、たまらなくなった。
「ねえ、辛いんでしょ?あたしの血をあげるから」
何度も何度もそう提案するのだけど、総司は決して首を縦には振らなかった。
「こんなの、ただの風邪だ」
「でも」
狼化して戦っている最中に倒れるなんて、どう考えても普通じゃない。
「ばか。風邪くらいで好きな女の肌に、傷を付けたい奴がいるかよ」
総司はそう囁くと、あたしの腕をとる。
そこには、上様に血を捧げた時につけた短刀の後が、薄らと白い線になって残っていた。
もちろん、総司が噛みついた首筋の傷も今も残っていて、総司にとってそれは、大きな後悔となっているようだった。
「そんなの、いいのに」
自分の肌に傷がつくことより、総司が苦しい思いをする方が、よっぽど辛いのに。
銀月さんにも『総司をよろしく』って頼まれてるのに……。
「……じゃあ、ちょっと補給させてもらうかな」
総司が低く囁くから、ぱっと顔を上げる。
すると総司は、血を得るために噛みつくのではなく、熱い唇を押し付けてきた。