幕末オオカミ 第二部 京都血風編
油小路事件から1ヶ月弱。
新撰組は、また屯所を不動堂村から移転、今度は伏見奉行所に移ることになった。
そして、慌ただしく引越しを終えたある日。
「山崎監察、これってなんの任務ですか?」
祇園のとある料亭に呼び出されたあたしは、そこで待っていた山崎監察に、突然着替えさせられてしまった。
普通の女装や、遊女の格好ならまだわかるんだけど、今着せられているのは……婚礼の儀式に用いるような、白無垢に綿帽子だった。
振袖も、その上の打掛も、小物類も全部が純白。汚さないかびくびくしてしまう。
着せられている途中から、あれこれおかしいなとは思ったけど……。
高島田まで結われて、いったい何をさせられるんだろう。
「まあまあ、気を楽にして」
監察に手を引かれ、わけのわからないまま、廊下を歩いていく。
そして、ある広間の前で立ち止まると、中からにぎやかな声が聞こえてきた。
もうすでに、宴会が始まっているような感じだ。
「あの、山崎監察……」
「皆さん、お嫁さんの準備ができましたよ!」
監察が声をかけると、おおっと中から声が聞こえた。
これって、永倉先生や原田先生の声じゃない?
監察に確かめる間もなく、ふすまが開けられる。
するとその中には、幹部たちがお膳を並べて座っていた。
みんなかしこまったような、黒い紋付の羽織を着ていて、いつもより顔つきが引き締まって見える。