幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「おおお、なんてキレイで可愛い花嫁さんなんだ!」


局長がぱああと顔を輝かせ、こちらを見つめて笑った。


それって、もしかしなくてもあたしのこと?


「何を呆けているんだ。早く座れ」


副長に言われると、山崎監察があたしを上座に連れていく。


こ、こんな局長よりいい席に座るなんて、畏れ多い……。


し、しかもなんだこのお膳!おかずの!おかずの数がめっちゃ多い!


大皿に盛りつけられた焼き魚やかまぼこを見ただけで、よだれが垂れそうになる。


「はい、お次は花婿さんでっせ~」


山崎監察の機嫌が良さそうな声が聞こえ、お膳から視線を離す。


花婿って言ったよね?


ふすまの方を見ると、そこから黒い紋付袴を着けた総司が、料亭の女中に引っ張られてやってきた。


「山崎さんっ、なんなんですかこれ……っ」


どうやら着替えの時点から異変を感じて抵抗していたらしい総司は、すこし乱れた前髪で、広間を見渡す。


そして、あたしと目が合うとぴたりと動きを止めた。


「か、楓?」

「よっ、総司。なんかいきなり呼び出されてコレ着せられたんだけど、あんたも?」

「お、おう……」


女中にぐいぐいと手を引かれ、総司はあたしの横に無理やり座らされた。


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