幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「すごーい、本当の花婿さんみたい!」
ちゃんと沖田家の家紋が入った黒い羽織が、いつもよりさらに総司を美丈夫に見せている。
「みたい、じゃなくて、今日の主役はお前たちだ」
副長が呆れた顔で、ぶっきらぼうに言う。
「ええと、近藤先生?」
「つまり、お前たちの祝言を挙げてやろうと思ってな。
このご時世が落ち着くのを待っていたら、いつまでもできないだろう?」
局長がにこにこと笑ってあたしたちを見る。
「お前らを驚かそうと、内緒で準備してたんだよ。主に、土方さんが」
「新八!てめえ、何言ってやがる」
「だって、着物を発注したのも、ここの予約をとったのも、あんたじゃないか」
「左之!その口塞いでやろうか!」
副長は照れたのか、顔を真っ赤にして刀を抜こうとした。
「というわけで、松本先生と総司の実家の許可もとれているし……時間はかかってしまったし、正式な儀式というわけにはいかなくて申し訳ないが、ささやかに祝わせてくれ」
局長が副長をなだめながら、座らせる。
あたしはまだ何が起こっているのかよくわからなくて、ぽかんと口を開けてしまう。
えっと……つまり、総司とあたしの祝言を、今からここでやろうって言うのね?