幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「や、やめてくださいよ、ガキの頃の話は」
頬を赤らめる総司の横顔を見ていると、じわじわと胸が熱くなってきた。
いつか、九条河原で話してくれた、総司の昔話。
あのあと、あたしもこの大きな家族に入れるんだって、言ってくれたよね。
最初に求婚してくれたときから色々なことがありすぎて、気づけば3年以上も経っていた。
「こうして見ると、楓もすっかり大人の女性だな。
いつもは、会ったころとそう変わらないと思っていたが」
「斉藤先生……それ、褒めてるんですか?」
「無論だ。お前は今も昔も美しい」
真顔で褒められても冗談にしか聞こえなくて、ぶっと吹き出してしまった。
「なぜ笑う」
真顔で返してくる斉藤先生の様子に、総司も笑い始めた。
「あーあ、ここに平助もいりゃあな。あいつ、いつ出張から帰って来るんだか」
既に酔っぱらった永倉先生の独り言が、大きく響く。
出張か。言い得て妙と言うか、なんと言うか。
「お前なあ、めでたい席で愚痴こぼしてんじゃねえよ」
原田先生が永倉先生を軽く小突く。
そのとき、突然広間の壁がぐにゃりと歪んだ。
「えっ!?」
全員が驚いてそちらを見ると、歪んだ壁を、まぶしい光の球体が通り抜けてきた。
あれ?あの光、どこかで見たような……。