幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「もののけか?」


副長が立ち上がり、刀に手をかける。

すると、球体が一層まぶしい光を放つ。


それは徐々に細かい粒子となり、人の形を作り始めた。


「あっ!」


原田先生が声を上げた。


粒子は完全な人となり、その姿はあたしたちがよく知っている人物だったからだ。


ふわふわした茶色い髪に、色素の薄い大きな瞳。


透き通った白い頬に、優しそうな笑みを浮かべるのは、間違いなく……。


「平助くん!」

「平助!」


打ち合わせもしていないのに、総司と声がそろってしまった。


驚く一同を見回し、平助くんはにこりと笑う。


「ひどいよなー、せっかく帰ってきたのに、誰も屯所にいないんだもん」

「か、帰ってきたって……」


永倉先生が涙目で指をさすと、平助くんはにっと笑う。


「うん、無事にもののけと同化できたから、帰ってきたんだよ」


そう言うと、彼は自分の頭を指さす。


するとそこに、ぴょこんと可愛らしい白い獣耳が現れた。

同時に、おしりからも白いふさふさした尻尾が。


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