幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「平助……心配かけやがって」


総司も立ち上がり、斉藤先生ごと平助くんを抱きしめる。


「うわー、俺愛されすぎじゃね?どうせなら楓に抱きついてもらいたいよー」

「それはダメだ。あいつは、俺の嫁だから」

「なんだそれ。総司、俺が帰ってきて嬉しくないのかよ。ちょっとくらいいいじゃん」

「嬉しくないわけないだろ!でも、楓に触るのは禁止だ」

「けち!」


平助くんはそう言うと、あははと大きな口を開けて笑った。


やがてみんなが体を離すと、平助くんはあたしの前にそっと座った。


「良かったね、楓。すごくキレイだ」

「平助くんは、すっかりもとどおりだね」

「あ、ごめん。これは銀月と同じ、幻の姿なんだ。ほんとは可愛い狐ちゃんだよ」


コン、と鳴き真似をした平助くんは、銀月さんは上様の警護に戻ったことを教えてくれた。


「そっかあ……とうとう、人妻になっちゃうんだなあ」


少し寂しそうに、勧められた盃を傾ける平助くん。


「悔しいけど、すごくお似合いの夫婦だよ。おめでとう」

「ありがとう……」


平助くんにお祝いを言われた途端、胸に実感がわいた。


あたし、本当に総司のお嫁さんになったんだ……。


「総司も、おめでとう。楓を泣かせたりしたら、許さないからね」

「もう散々泣かせたけどな。できればいつも笑っていてほしいと、俺も思ってる」


隣に座りなおした総司が真顔でそんなことを言うから、ますます胸が熱くなった。


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