幕末オオカミ 第二部 京都血風編
平助くんが戻ってきて、一層盛り上がった宴会。
原田先生の腹芸のあと、突然副長が詩を吟じるとか言い出して、びっくりするやら、嬉しいやら。
永倉先生の言葉通り、堅苦しいことは一切ない、身内だけのお祝いだけど、あたしたち新撰組には、この方があっているみたい。
「ねえ、総司」
「ん?」
「あたしね、あたしを置いて先立った両親を恨んだこともあったんだ。
家茂公に嫁がなきゃならなくなったときは、自分の身の不幸ばっかり、呪ってた。
あの頃は、こんなに幸せな日が来るなんて、想像もしていなかったよ……」
ますますお酒が入ってバカ騒ぎし続ける一同を見つめる。
愛しい愛しい、あたしの仲間たち。
そして彼らに見守られながら、一番愛しい人の元にお嫁に行けるなんて。
「それは、お前があきらめないで頑張ったからだ」
ふと、膝に置いていた手に、節くれだった長い指が絡められる。
「俺も、今だけは両親に感謝してる。
武士になることを夢見て上洛した日よりも、幕臣に取り立てられた日よりも、今日が一番幸せだ」
「総司……」
「だってほら、隣にこんなに綺麗な嫁さんがいて……みんなが祝ってくれてる。
みんながそろって、笑ってる……」