幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「楓くん!」
「山崎監察!」
あたしの名を呼んで走ってきたのは、黒い忍び装束を着た山崎監察だった。
「伝令や!敵が……長州のやつらが……禁裏に発砲しよった」
「えっ!」
「なんだって!?」
いつも冷静な山崎監察も、さすがに厳しい顔をしている。
尊王のはずの長州が、天子様のいる御所に大砲を打ち込んだらしい。
あたしのそばにいた総司も、目を丸くした。
「許せねえ……結局あいつらは、天子様を利用するつもりしかなかったんだな」
「とにかく、ここはもう捨てておいて、全軍御所へ向かえとのことや。
局長や副長はもうそっちに急行する準備をしている」
「はい」
「俺はこちらの隊士たちをまとめる役を負った。
キミは屯所へ走って、山南副長と藤堂くんにこのことを伝えてくれ。
動けそうな人員は、すべて御所へ急行するように!」
山崎監察は早口でそう言うと、風のように駆け抜けていってしまった。