幕末オオカミ 第二部 京都血風編
幕府側の勝利に気を良くしながらも、新撰組が手柄を立てる機会をまだ狙っているような……。
とにかくどこか楽しそうな土方副長に、沖田や平助くん、他の隊士がついていくことになった。
「敗走した長州兵たちは、町人に押し借りしながら生き延びるつもりだろう。
見つけ次第捕縛しろ!」
「御意」
「監察。山崎は引き続き、会津藩との伝令を頼む。
小娘、お前は……」
副長の命令を待っている途中、最後尾で木に登って街の様子を見ていた隊士から、声が上がった。
「副長、長州藩邸の方向から火の手が上がっています!」
「……ちっ。焦りすぎだぜ、一橋公……」
そういえば、今回の戦の指揮をとっていたのは一橋公だったっけ。
副長が舌打ちしているのは、多分今日がひときわ風の強い日だからだろう。
敵軍が逃げ込む場所をなくしたいのはわかる。
けれど、その火が、どこへ燃え移るかわからないのに……。