幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「総司、小娘!」


日が昇り、火の勢いに加えて暑い日差しが容赦なく降り注ぐ中、
副長があたしたちを呼びつける。


「山崎から伝令があった。

この火、昼過ぎには壬生の方まで届くかもしれない」


「はい」


「屯所の近くの、六角獄舎を知っているな。

国事犯たちが外に出るかもしれねえ。

敗走兵たちと合流しないように、脅したまま避難させろ」


六角獄舎というのは、色々な罪人を放り込んでおくところだ。


新撰組が捕縛した不逞浪士も、そこにいるみたい。


普通獄舎が火事になった場合は、3日以内に戻ることを条件に、罪人たちを一時的に解放するのだけど……。


今のこの状況で、不逞浪士たちを解放するわけには行かない。


あたしと総司、そして一番隊は六角獄舎に向かって走り出した。


獄舎は屯所からさほど離れていない。


あたしはふと山南先生のことを思い出した。


先生、無事でいるかな……。




< 50 / 404 >

この作品をシェア

pagetop