幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「総司、小娘!」
日が昇り、火の勢いに加えて暑い日差しが容赦なく降り注ぐ中、
副長があたしたちを呼びつける。
「山崎から伝令があった。
この火、昼過ぎには壬生の方まで届くかもしれない」
「はい」
「屯所の近くの、六角獄舎を知っているな。
国事犯たちが外に出るかもしれねえ。
敗走兵たちと合流しないように、脅したまま避難させろ」
六角獄舎というのは、色々な罪人を放り込んでおくところだ。
新撰組が捕縛した不逞浪士も、そこにいるみたい。
普通獄舎が火事になった場合は、3日以内に戻ることを条件に、罪人たちを一時的に解放するのだけど……。
今のこの状況で、不逞浪士たちを解放するわけには行かない。
あたしと総司、そして一番隊は六角獄舎に向かって走り出した。
獄舎は屯所からさほど離れていない。
あたしはふと山南先生のことを思い出した。
先生、無事でいるかな……。