幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「一橋公の命令なのだ。
集団で脱獄させたら、敗走兵と何をしてかすかわからないから……」
土方副長と同じ予想。
でも、こんなひどいことをしなくても……
「一番隊諸君は外へ出なさい。
このことは他言無用です」
山南先生がそう言うと、顔面蒼白だった一番隊の面々はそそくさと獄舎をあとにした。
「山南さん……どうして」
「悪い予感がして、来てみたんだよ」
沖田の言葉に、いつもは見せない厳しい顔で答える山南先生。
そういえば、そんなこと言っていたような……
「お奉行、もうやめてください。
このようなことが知れたら、ご公儀の信用が落ちるばかりです」
「では公の命に背けと言うか?
何をしているお前たち、突け!
早く全滅させろ!」
山南先生の言葉を聞こうともしない奉行。
彼だって、一橋公の命令で、心が圧迫されて限界なのかもしれない。
奉行に命令された役人たちは、あまりに悲惨な光景に目をつむりながら槍を突き出す。