幕末オオカミ 第二部 京都血風編
総司はこくりとうなずく。
そこまで考えていてくれたんだ……。
「そりゃあ、楓くんの素性を隠すのにちょうどいいかもしれないな」
「って、そんなに都合よくいくかよ。
名字帯刀を許された身分の子女の代わりに養子になるってことは、
まずそういった事情の家を探さなきゃなんねえんだぜ。
見つかったとして、新撰組に紹介された娘をいきなり養子になんて、誰がしてくれるんだよ」
乗り気になりそうだった局長に、副長がつっこむ。
たしかに……今の京は被災者であふれかえっていて、行方不明者は山のようにいるだろう。
だけど、復興で一生懸命な今はまだ、養子縁組を考える余裕なんか、ないよね。
みんな、自分が立ち直るのに一生懸命だから……。
「そういうムリのある策略は、すぐにぼろが出るぜ」
副長は腕組みをして、ため息をついた。
「……近藤先生、どうにかなりませんか」
副長の説得はムリだと思ったのか、沖田は局長に食い下がる。