幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「ううむ……なんとかしてやりたいんだが……。
そうだ、楓くんを俺の養子にするか?」
「近藤さん、軽くそういうことを言うもんじゃねえよ」
「トシ……」
「いいか、総司」
困り果てた顔の局長の代わりに、副長が真面目な顔で言う。
「池田屋と先の戦の功績で、新撰組の評価は上がりつつある。
近藤さんが幕臣に取り立てられる日は、意外に近いかもしれない」
総司ははっと息を飲んだ。
局長が、幕臣に取り立てられる……。
「そうしたら、身内のことも調べられるだろう。
わけのわからない娘がいると知れたら、その話はすぐなくなるぞ」
そんな……局長のせっかくの出世の好機を、あたしがつぶすなんて。
そんなこと、絶対にできない。
「近藤さんだけじゃねえ。
右腕であるお前だって、いつか士官の話が来るかもしれねえんだぜ。
お前の夢だったじゃねえか。
大名になった近藤さんと一緒に、ご公儀の役に立つのが」
そういえば、この前聞いた総司の昔話で、そんな話が出たような……。