幕末オオカミ 第二部 京都血風編
近藤先生を支え続けるのが、総司の子供の頃からの夢……。
「そ、総司、あたし、ムリに夫婦にならなくてもいいよ!」
重苦しい雰囲気に耐えられず、あたしはわざと明るく言い放った。
総司はぎろりとあたしをにらむ。
その視線に射抜かれると、途端に泣きそうになってしまった。
「総司の気持ちは本当に嬉しいよ。
そこまで、あたしのことを想ってくれて……。
でもあたし、総司や局長の足かせになるくらいなら、
正妻なんて立場はいらないよ」
「楓……でも」
「上様の側室だって、結局ひどい扱いだったもん。
肩書きなんてどうでもいいよ。
あたしは、総司と一緒にいられればそれで……」
好きな人の害悪になるくらいなら、夫婦になれなくたってかまわない。
「あたし、妾でもいい。
今のまま、新撰組隊士でもいい。
総司が、世界で一番あたしを大事にしてくれるなら、それでいい!」
ぎゅっと総司の手をにぎって見上げると、険しかったその顔が赤くなり、少し緩んだように見えた。
まるで、泣きそうな表情に……見えた。