幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「小娘に言い聞かされているようじゃ、まだまだだな」
まるで甘すぎるお菓子を無理やり食べさせられたような顔の副長が言う。
総司がきっと彼をにらむけど、副長は視線を合わせずに席を立った。
「……部屋は一緒にしてやっただろ。
復興が進めば、休息所として二人で住める家を探してやることもできる。
それまで我慢しろ」
それだけ言うと、副長は局長室から出ていってしまった。
「……すまんな、総司、楓くん」
局長が謝ると、総司は首を横にふった。
「いえ、突然でしたから……」
「でも……俺は嬉しいよ」
「えっ?」
二人で見上げると、局長は笑って言った。
「あんなに小さくてやせっぽちだった総司が、夫婦になりたいだなんて言うようになったんだと思ってな……。
しかも家柄や見た目の色気だけに惑わされず、心の優しい子を選んでくれて、俺は、父親代わりとしてぇぇ……」
最後の方は涙に飲まれてしまって、なんだかよく聞こえなかった。