幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……ごめんなさい、家柄も見た目もぱっとしなくて……」
「違う、楓くん、そんなことを言っているんじゃないんだよ。
さっきの君のセリフが心に沁みてだなあ……」
懐紙を差し出すと、局長は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をぬぐった。
「総司、お前は果報者だなあ。
こんなにいい子に惚れられて……」
おおげさだよ、局長。
結局あたしの事情で、正式な夫婦になれないんだし……。
罪悪感が胸にのしかかろうとしたとき、総司があたしの頭をぽんとたたいた。
「……はい。
俺は日本一の果報者です」
え……。
嘘かと思った。冗談かとも。
でも、総司が局長に嘘を言うわけない。
そっと見上げた総司は、こっちを見て微笑んでいた。