幕末オオカミ 第二部 京都血風編
そういえば池田屋の少し前、永倉先生たちが冗談でそんなことを言ってたな。
現実的に考えたら、ムリだってことはすぐにわかりそうなものなのに……。
「それでも、なんとかしてくれようとしてくれた気持ちだけで、十分だよ」
あたしはさっきと同じことを繰り返す。
「……でも、ひとつだけお願いがあるの」
「なんだ?」
「…………今より偉くなっても、幕臣に取り立てられるような日が来ても……
他の女の人を囲ったりしないでね?」
総司があたしだけを見ていてくれるなら、妾だってなんだっていい。
逆に、他の偉い人みたいに、正妻もいて、妾も何人もいるっていうのは、我慢ができない。
正式に夫婦になれたって、心がつながってなかったら、意味がない。
「当たり前だろ、バカ!」
総司は少し怒ったように言うと、乱暴にあたしを抱き寄せた。
「きゃ……っ」
そのまま襟のあわせから指を滑り込まされて、思わず声が出てしまう。