幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「それでこそお前だよ」
総司はぽんぽんと、大きな手であたしの頭を軽くたたく。
今は息遣いが聞こえるほど、近くにいる。
けれど、総司は武士だ。
いつ、こんなふうに突然、戦にに出動しなければならないかわからない。
「……武運を祈ってるよ。
お願いだから、絶対に無事で帰ってきてね」
体のことだって、どうなっているのか本当のところは誰にもわからない。
とりあえず池田屋以降は幹部が交代で見張ってくれたらしいけど、狼化することはなかったという。
元気になったならなったで、結局捕り物や戦に参加しなきゃいけないし……あたしの心配は尽きることがないんだろうな。
武士なんかに惚れちゃったのが悪いんだけどさ。
「可愛いこと言うようになったじゃねえか。
九条河原なんて、すぐそこだろ」
総司はふっと笑ったかと思うと、そっとあたしに口づける。
あたしはいつの間にか、総司の口づけの前触れを察知できるようになっていて、自然にまぶたが閉じられるくらいに成長していた。
「お前みたいな泣き虫を置いて、死ねるかよ」