幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「きゃああああっ!」
「なんて声を出すんですか。さあ、名前を教えておくれ」
くるりと体を返され、至近距離で顔をのぞきこまれる。
すると、伊東さんはキラキラした目を余計に輝かせ、頬を薄紅色に染めた。
「な、なんという美童……!キミも隊士なのかい?」
し、しまったぁぁぁ!
これからこの人たちの周りを調査しなきゃいけないのに、しっかり顔を見られちゃった!
「あ、あの、近いです!」
「それでは質問に答えていないね」
「ひいいいい、離してください~!!」
男装でいるあたしが、もう本物の美丈夫にしか見えていないんだろう。
伊東先生はうっとりとこちらを見つめている。
何故かわからないけど、ものすごく怖い……沖田、副長、笑ってごめん!!
「……小娘……」
早速姿を見られたあたしを、副長が伊東さんの肩越しににらんでいる。
そして、もっと鬼のような顔をしていたのはもちろん……。
「……ぶっ殺す」
低くうなった、総司だった。