幕末オオカミ 第二部 京都血風編
不穏な空気を察知したのか、すぐそばにいた山南先生が伊東さんの肩をたたいた。
「伊東さん、彼女は女性です。離してあげてください」
「え……?」
女性と聞いて、伊東さんの目が丸くなった。
山南先生は周りに聞こえないよう、小さな声で話す。
「彼女は監察方隊士です。
そして総司の妻になる予定の女性なので、下手をすると彼に斬られてしまいますよ」
つ、妻って……!
かああと頬を上気させたあたしを見て、伊東さんは名残惜しそうに手を離した。
「なんだ、女性……しかも沖田くんのお手つきなのか。
どうりで華奢だと思いましたよ。
それにしても可愛いなあ……」
じっとりとあたしを見つめる伊東さんの後ろで、とうとう総司が刀の鍔を押したのが見えた。
ちゃき、と小さな音に反応し、伊東さんがそちらを振り向いた。
「心配しないでください。
拙者はどちらかというと、キミの方が好みだから」
そう言われた途端、ぞわっと鳥肌を立てた総司から力が抜けていった。
伊東さん、恐るべし……!