幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「それにしても山南さん、お久しぶりですね。
あなたに会えるのも楽しみにしていました」
伊東さんは山南先生は恋の対象ではないらしく、普通に友好的な微笑みを見せる。
「あはは……ありがとうございます」
「落ち着いたら、色々とお話をしましょう」
「はい、ぜひ」
伊東先生はちらりと、山南先生の怪我をした腕を見たけど、それについては何も言わなかった。
もしかすると、平助くんから山南先生を励ましてほしいと頼まれているのかも。
山南先生が苦笑交じりに答えると、今度こそ伊東一派は離れの方に歩いていった。
「……近藤さん!なんなんだよありゃあああああ!!」
姿が見えなくなった途端、副長が局長の胸ぐらをつかむ。
しかも泣いているような、怒っているような顔で。
本当に浮気された人妻みたい。
「ええと……あれでも頭は切れる人なんだ」
「『頭の線が切れてる』の間違いじゃねえのか!」
「トシ、落ち着いてくれ。な」
珍しく隊士の前で取り乱す副長をなだめながら、局長も自分の部屋へと向かっていく。